※2018年8月26日更新
顧客ニーズの多様化や変化が著しい今日この頃。
最先端の製品は、どんどん変化を求められ、製品の寿命が短命化しております。
そこで、研究開発の1つとして採用されているのが「オープンイノベーション」です。
以前の記事で、収益性が高い企業ということで電子基板用の薬品メーカー「メック」を取り上げました。
メックも、今後積極的に実施していきたいことにオープンイノベーションをあげております。
今回は、オープンイノベーションについてまとめていきます。
オープンイノベーションとは
企業が研究開発を行うときに、自社だけでなく他社や大学、地方自治体など異業種、異分野が持つ技術やアイデア、データなどを募集し、革新的なビジネスモデル、研究成果、製品開発につなげるイノベーションの方法論です。
大手メーカーが実施する場合は、次のように定義します。
「メーカーが自社のみでは解決できない研究開発上の課題に対して、既存のネットワークを超えて最適な解決策を探し出し、それを自社の技術として取り込むことによって、課題を解決する。」
イメージとしては、社外の有力な技術のインソーシングです。
決して、アウトソシーングではありません。
このような目的であれば、技術やノウハウの流れは「外→内」。
技術流出を気を付けるのは、技術提供する側にあります。
2000年代の始め頃に米ハーバードビジネススールのヘンリー・チェスブロウ博士により提唱されました。
思っていたより前からあるものなのですね!
従来の単独企業で実施する研究開発であるクローズドイノベーションは、技術、利益が全て自社に還元されるというメリットがありますが、研究開発から商品提供までに莫大な時間、人的コストがかかるデメリットもあります。
製品の短命化、目まぐるしくニーズが変化する現在において、有効的な方法と注目を集めています。
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オープンイノベーションの現状(日本、海外)
オープンイノベーションの代表例は民間企業と大学の連携です。
大学研究成果、アイデアを民間企業が活用して連携していくイメージです。
その際、企業が大学に研究費を支払いますが、企業の研究費のうち大学に対する研究費の拠出割合を診てみましょう。
2008年→2012年で、日本は微増しております。
が!
他の国に比べると最も低いことが分かります。
(データ出所:経済産業省 オープンイノベーション白書)
さらに大学との共同研究に民間企業が投資する1件あたりの研究費も海外に比べ低いです。
外国では企業が大学と共同研究をする際、1件当たり1,000万以上が一般的です。
日本は300万未満が全体の約80%にあたります。
(データ出所:経済産業省 オープンイノベーション白書)
また、2015年の報告書「The Global Innovation Index 2015: Effective Innovation Policies for Development」では、世界141カ国について、効率的にイノベーションを創出できる環境を基準に、ランキングしています。
少し見ずらいですが、以下は、上位20カ国の結果です。
日本は第19位にあたります。
(データ出所:経済産業省 オープンイノベーション白書)
2012年から常に上位5カ国にランクインする国が、スウェーデン、英国、スイス、フィンランド、米国です。
これらの国はオープンイノベーションの環境が整っており、身近なものなのでしょう。
このような状況を考慮して(だと思います…)、国が動き始めました。
2018年8月:関東経済産業局がオープンイノベーションを後押しするために、大手企業と中堅・中小企業をつなぐ交流会を実施。
2018年9月:外部との連携に意欲的な企業と研究機関をつなげるイベントを実施予定。
メリット
次にオープンイノベーションのメリットをあげます。
・外部の新たな知識や技術の獲得
・多様化する顧客ニーズへの対応力向上
・短期間、低コストでの開発が可能なため、事業推進のスピードアップが図れる!
なんといってもこのスピードが重要なポイントになるでしょう。
オープンイノベーションは外部から知識や技術を得られるため、迅速に商品開発がおこなえます。
デメリット
続いてデメリットです。
・自社のアイデア、技術流出の可能性
・自社開発力の停滞
・収益の減少
導入企業事例
オープンイノベーション白書にある事例を2つ紹介します
〈オリンパス〉
・オリンパスの技術をオープンにする「オープンプラットフォームカメラ(OPC) Hack & Make Project」
自社の技術をオープンにして、デベロッパー、クリエイター、ユーザーと共に新しい写真体験を開拓するプロジェクトを立ち上げました。
オープンプラットフォームでカメラのアクセサリーやアプリケーションを共に開発できるのはもちろん、ワークショップ、アイデアの出し合い会議を開催しコミュニティを創出。
コミュニティを通した新たな価値の創造に取組みます。
(データ出所:経済産業省 オープンイノベーション白書)
〈P&G〉
海外事例です。
•オープンイノベーション推進のため、外部との協力によるイノベーションを50%にする高い目標設定
•製品開発上の技術ニーズを公開し、広く技術シーズを募集するサイト「コネクト・アンド・デベロップ(C+D)」の立ち上げ
研究開発の効率化、新商品のスピード化を目的に、2000年以降、新製品開発における外部の技術、アイデアの取り込みを推進してきました。
社外の技術を取り込むための担当役員や専門職員を設置するとともに、社内の技術ニーズを公開し、社外より技術を公募するプラットフォームを活用しました
P&Gは2000年以降、売上、純利益ともに拡大傾向です。
(データ出所:経済産業省 オープンイノベーション白書)
オープンイノベーション白書によりますと、直結する成果は以下の通りです。
・2005年時点で、外部との連携によるイノベーション比率が50%を超え、C+Dを通じて研究開発の生産性が約60%上昇。
・15年間で、オープンイノベーション人材が育成され、ノウハウが蓄積・共有されたことで、オープンイノベーションが企業文化として醸成されている。
・社内の革新的技術に対しては、新製品開発に繋げるための基金を設置し、自社の研究者のモチベーションも維持している。
P&Gの具体例としてよく取り上げられるのがプリングルズ(ポテトチップス)の例です。
ある年のパーティーシーズンを前に、どうすればプリングルズが売れるか社内会議をしていました。
アイデアとして出たのが「ポテトチップス1枚1枚にクイズを印字をしてみる!」
みんなでパーティー中に、このプリングルズを囲んで会話に花が咲きそうですね♪
しかし、P&Gはこの技術を持ち合わせていませんでした。
…時間がない!?
パーティーシーズンに間に合わせるには、自社以外のリソースから、この技術を得るしか方法がありませんでした。
そこで、次の技術を世界中から募集しました。
「湿った柔らかい食材に、可食性インクで文字を印刷する技術」
ここでマッチしたのがイタリアのベーカリーです。
なんとかパーティーシーズンに間に合い、プリングルズ プリントチップスが市場に出回り大ヒットしたのです。
※おまけ
2013年に日本で発売され話題になったフィリップスのノンフライヤーもオープンイノベーションの技術を活用していました。
今回の記事を作成するにあたり、参考にした本は以下になります。
オープンイノベーションを実際にビジネスで実施しようとしている方におススメ。
具体的な手順、ポイントが学べます。
オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ
まとめ
なかなか日本ではまだ浸透していないオープンイノベーション。
これからの目まぐるしく変化する社会に対応するために、今後、耳にすることが多くなりそうです。
収益、情報漏えいと導入への課題も多いですが、時間、コスト面でメリットが高く、提携先のパートナーと両者にとって良いものになれば成功ですね。
社外の知識、データ、研究開発力も活用して、さらに良いものが生み出されていく日本産業に期待です。
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